東京・明治大学中野キャンパスにて行われたインタラクション2017の最終日(2017.3.4)に参加し、 小鷹研究室の博士課程在籍中の石原由貴が、装置『動くラマチャンドランミラーボックス』 に関係する心理実験の内容について、口頭発表とインタラクティブ発表を行いました。
今回は、インタラクション参加5年目にして、小鷹研としては、口頭発表投稿への初めてのチャレンジとなりました。分野外のトピックでありながらも、査読者の手厚いサポートのもとなんとか採択をいただいています(採択率は43%だそうです)。
口頭発表は、ぼくも経験したことのないような広い会場で、事前の発表練習も微妙だったので、石原さん、大丈夫かなぁ〜、とドキドキしながら見守っていましたが、さすがですね。ちゃんと本番に合わせて仕上げてきました。あの場所で、あれだけ堂々と落ち着いて喋れていたのはすごいと思います。とはいえ、MVFになじみのない方々にとっては内容が把握しづらい点があったのも事実で、今後のいい課題となりました。
午後のインタラクティブ発表は、僕と、石原さんと、3年生の室田さんが説明員として参加して、装置も3台持っていくかたちで、盤石な態勢でのぞんだのですが、それでも、2時間以上ずっ〜と人の波が止まず、100人近い体験者の生の声を聞くことができました。あらためてインタラクションに参加することの意義を再確認したところです。
少なくない人が、装置のカラクリを説明した後であっても、鏡面背後の手が(錯覚としてではなく)「実際に物理的に」動いていると強く信じており、全く動いていない鏡面背後の手を実際に確認してもらって、驚いているのを見るのは面白かったです。ある人は、『自分が鏡を見ている時だけ、鏡面背後の手を秘密裏に動かしているのでは』と疑っていました。。
100人近い体験者のなかで、明確に錯覚の影響を受けない人は10人に満たない数でしたので、<動くラマチャンドランミラーボックス>は、小鷹研史上でも最大の錯覚装置ということになります。一方で、これですら感じない人の脳内に何が眠っているのか、ということを探りたいという気持ちは、これまで以上に高まっているところです。
論文を仕上げていく過程で、この研究が、従来のMVF(Mirror Visual Feedback)では掘り起こせなかった、かなり刺激的なポイントをついている、ということについて再確認しました。とりわけ、固有感覚(手の位置感覚)と視覚(によって捏造される固有感覚)の時間微分(=移動速度)がお互い矛盾している時に、どこに均衡点があるか、という切り口は、今後の錯覚研究においても、とても一般性を持つ論点となりうると思います。今回の実験の結果をざっくりいうと、現実ベクトルを覆すためには、4倍の量の(逆向きの)虚構ベクトルが必要である、ということです。
石原さん、この研究、すごく面白いんです。もう国内での発表は十分やったので、はやいところ国際ジャーナルへの準備を〜!!
石原由貴・小鷹研理:Mirror Visual Feedbackを活用した 鏡の移動による上肢の移動感覚の変調, 第21回情報処理学会シンポジウム・インタラクション2017, 明治大学, 2017.3.4(口頭発表) PDF